Energy problem

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スウェーデンのエネルギー問題    (2002年 牧野裕寿)

2002年春、政府社民党は中央党と左翼党との合意を得て、2002年のエネルギー長期計画に関する政府案を国会に上程した。スウェーデンは2002年秋に総選挙を控えて、エネルギー政策に関しては、エネルギーをめぐる各党の思惑も手伝って、社民党は野党の一部とも連携して国会内に於いて幅広い支持を確保した。

当時の産業省のビヨン・ローゼングレーン(Björn Rosengren)大臣は、安全なそして効率的な環境に優しいエネルギー供給を主眼に、政党の保守、革新と言ったブロックを乗越え、1997年のエネルギー政策の見直しを図るとともに、バルセベック原発2号機の現実的な廃止時期を見据えたものにする為、原発の廃止を積極的に推進する同じ与党内の環境党よりも社民党のエネルギー政策に近い中央党との連携を図ったとしている。

1997年のエネルギー事情からすると現状のエネルギー問題は大分変化を遂げており、1997年に策定したエネルギー計画は、現実に馴染まなくなって来ている。国立経済研究所の2000年から2003年までの総エネルギー消費の実態と予測を見ると、2000年587TWh、2001年623TWh、2002年619TWh、2003年631TWhと2002年の若干の落ち込みはあるものの、着実に伸びが予想されている。また、長期的な展望のもとに、電力分野に於ける新エネルギー関係の技術開発の促進や種々のコストを低く抑えて、より効果的のエネルギー利用を図る事があげられている。この様な状況の変化から、1997年のエネルギー計画に代わるものとして、今回のエネルギー長期計画が策定された。

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政府の新エネ開発目標に異議

政府としては、新エネルギー関係の開発目標を2002年から2010年までの間に、10TWhの電力供給を実現したいとしており、2004年の気候変動調査に於いて、電力供給に及ぼす新エネルギー関係の評価如何によっては、2002年から更に2012年への開発目標として15TWhまで引き上げたいとしている。 しかし、この開発目標について新エネルギー関連団体、研究機関、業界等から目標値が低すぎるとの指摘がされており、新エネルギー分野の開発速度と開発努力の過小評価ではないか見られている。例えば、スコーネ県庁、全農連(Lantbrukarnas Riksförbund)、全国小規模発電所協会(Småkraftverkens Riksförening)、スウェーデン樹木(森林)燃料協会(Svenska Trädbränsleföreningen)、ヨーテボリ大学等の団体は、2010年までの開発目標を20TWhに引き上げるよう提案している。

一方、スウェーデン・エネルギー協会全国機構(Sveriges Energiföreningars Riksorganisaton)、スウェーデン風力発電供給契約者団体(Sveriges Vindkraftsleverantör)、スウェーデン自然保護協会(Svenska Naturskyddsföreningen)、風力発電業界・投資とプロジェクト企業団体(Vindkraftbranschens Inversterings och Projekteringsföretag)等は、EUが奨励している新エネルギーを電力源とする電力供給の目標から見ても2010年までの開発目標を25TWは達成できるとしている。これは、EU議会が2001年10月27日に施行した、新エネルギーを電力源とする電力供給のエネルギー開発の奨励に基づくもので、2010年までにEU内の各国に新エネルギーの電力市場に占める割合を22%まで引き上げる事を求めている。(1997年に於いては、開発目標が14%であった。)

また、エネルギー庁は、独自の実情調査の判定からも2010年までに政府の開発目標より10TWhの上乗せは可能としている。そして、スウェーデン・バイオエネルギー協会(Svenska Bioenergiföreningen)等も、スウェーデンがEU内ではこの分野に於ける牽引的な役割を果たすと見ており、バイオエネルギーの開発能力の過小評価とコストの過大評価に疑問を呈しており、同じく10TWhの上乗せは可能としている。更に、スウェーデン・風力発電協会(Svenska Vindkraftföreningen)も、2010年の政府の目標である10TWhは、EUの指針を遥かに下回る低過ぎる数値であると断じている。(風力発電は2015年までに15TWhの開発を計画している。)

この様に、政府・産業省以外の全ての新エネルギー関係者が首を傾げる今回のエネルギー計画は、明らかに確実に達成出来うる数値と政府の予算に引き合わせた、夢も希望も取り入れられてない超現実的なものと言える。容易に達成できる政府の目標値は、新エネルギー業界の開発意欲を削ぎかねないだけに、2004年の見直し時期には、目標値の上方修正が必要になってくるだろう。

社民党、中央党、左翼党が合意に達した、エネルギー政策の総予算は、6年間に17.1億クローナとしており、2003年度予算から計上される。新エネルギー関係では、技術開発と市場参入への協力を目的として、風力発電へ特別予算が組まれており、総額3.5億クローナを5年間に渡って助成が行なわれる。また、ソーラシステム技術についても、更に2003年1月1日より2年間、国からの助成を継続する事が決められたが、具体的な予算額については、予算補助の申請数と設備の規模によって変わるため、2003年度予算案を組む中でどの程度の規模の予算が適正かを検討するとしている。

2002年時点に於けるエネルギー事情

エネルギー庁が2002年12月に公表した「スウェーデンの2002年エネルギー事情」レポートによるとスウェーデンのエネルギー総生産は、1970年の457TWh/年から2001年の616TWh/年と35%も増加している。しかし、原油、石油精製物の使用は、1970年77%であったのが、2001年には31%と減少し化石燃料への依存が、大幅に減少している。1970年代の石油の主な供給先は、家庭用として使われていたが、現在では、55%が運輸部門に使われている。ここ30年の間に化石燃料の依存から脱却すべく、電力エネルギーに関しては、原子力発電と水力発電を中心に稼動して、石油火力から脱却して電力を賄っており、現在火力発電は、連続的な寒波による大幅な電力需要に対応して輸入電力では手当が間に合わない時やダムの水不足、原子力発電のトラブルなどに対応して緊急用の予備電力としてしか機能していない。また、石炭、コークスなどの燃料も1970年から、4%の需要と横ばいの状況にあるが、バイオ燃料は、1970年9%から2001年16%へと大きく需要を伸ばしている。これは、産業に於けるバイオ燃料の使用や地域暖房システムでの利用が進んだ為で、それに、最近の家庭に於ける石油焚き暖房からペレット状のバイオ燃料による暖房への移行が、拍車をかけたと言っても良い。スウェーデンに於いて、化石燃料からの依存の減少は、バイオ燃料、風力発電、水力発電等の新エネルギーと呼ばれる伸びを見ても分かる。スウェーデンの総エネルギー需要が、ここ30年で35%も増加したわけだが、そのうちの29%は、新エネルギー分野の伸びによるものである。エネルギー庁の総エネルギー需要予測によれば、2002年が619TWh/年、2003年は631TWh/年とされており、国外からの電力輸入は、2002年が9TWh/年、2003年は7TWh/年と見られている。しかし、スウェーデンのエネルギー事情は、エネルギー消費の多い冬の天候に大きく左右される為、2002年12月中旬から断続的に続いている全国的な寒波が、この予測を塗り替える可能性もある。

2001年のスウェーデンに於けるエネルギー供給側の内訳を見ると原油、石油精製物192TWh/年(1970年350TWh/年、1985年210TWh/年)、天然ガス、都市ガス9TWh/年(1970年無し、1985年1TWh/年)、石炭、コークス27TWh/年(1970年18TWh/年、1985年34TWh/年)、バイオ燃料97TWh/年(1970年43TWh/年、1985年63TWh/年)、地域暖房システムのヒートポンプ7TWh/年(1970年無し、1985年3TWh/年)、水力発電79TWh/年(1970年41TWh/年、1985年71TWh/年) (グロス)、原子力発電211TWh/年(1970年無し、1985年173TWh/年) (グロス)、風力発電0.5TWh/年(1970年無し、1985年無し)、電力の輸出入-7TWh/年(1970年4Wh/年、1985年-2TWh/年)となっている。

他方、2001年のスウェーデンに於けるエネルギー需要側の内訳を見ると産業部門150TWh/年(1970年154TWh/年、1985年140TWh/年)、国内運輸部門92TWh/年(1970年56TWh/年、1985年76TWh/年)、住宅、サービス部門156TWh/年(1970年165TWh/年、1985年161TWh/年)、電力の変換及び伝送ロス178TWh/年(1970年49TWh/年、1985年154TWh/年)、原子力発電のエネルギー転換ロス138TWh/年(1970年無し、1985年114TWh/年)、海外船舶用重油と非エネルギー利用の原油40TWh/年(1970年33TWh/年、1985年23TWh/年)となっている。

エネルギーの利用の中で電力エネルギーの利用は、化石燃料に代わるものとして1970年から1987年まで年平均5%の伸びを示してきた。しかし、環境問題の取り組み、省エネの促進が顕著になる1988年から2001年までは、その伸び率は年平均0.65%と言う成長に留まった。2001年の電力供給側の内訳を見ると(数字は全てネット)水力発電と旧型の風力発電78.5TWh/年(1970年40.9TWh/年、1985年69.8TWh/年)、新型の風力発電0.5TWh/年(1997年から稼動0.2TWh/年、1999年0.4TWh/年)、原子力発電69.2TWh/年(1970年無し、1985年55.8TWh/年)、産業所有の発熱発電4.4TWh/年(1970年3.1TWh/年、1985年2.4TWh/年)、発熱発電5.2TWh/年(1970年2.4TWh/年、1985年3.7TWh/年)、石油火力発電0.1TWh/年(1970年12TWh/年、1985年0.5TWh/年)、ガスタービン発電0TWh/年(1970年0.7TWh/年、1985年0TWh/年)となっている。

多角的な新エネ開発に取り組む姿勢

スウェーデンに於いて新エネ開発は、脱石油、脱原発の推進を図る上で急務となっているが、エネルギー庁のこの程作成した「1998~2001年までのエネルギーの効果的な利用に関するエネ協の取り組みについての報告書」によると、新エネ関係の取り組みは多岐に渡っている。

直接的なエネルギーの効果的な利用

地域暖房システムの部門に於いては、パワー・ヒーティングの開発普及に1998~2002年まで10のプロジェクトに4億4500万クローナの投資援助を行なっている。これは政府のエネルギー政策プログラムに謳った4億5000万クローナとほぼ同額である。これに伴う総投資額は、21億5900万クローナとなっている。政府は当初、バイオ燃料によるパワー・ヒーティングによって、年間最低でも0.75TWh/年の発電量増加を目標としていたが、これによって0.88TWh/年の発電量増加を達成できた。パワー・ヒーティングは、従来の蒸気等を使った熱交換器に比べて、燃焼ガスを直接熱交換器に通す為、非常に発電効率と熱利用の効果が高く、使用する燃料が出す三分の二に当るエネルギーを発電と熱利用に使う事が出来る。新設のパワー・ヒーティングは、約160MWの発電力を持ったものも出て来ている。そしてまた、パワー・ヒーティングは、炭酸ガス及びその他の排出を大幅に低減させる効果ももたらす事が出来る。

輸送部門に於いてのエネルギーの効果的な利用は、自動車エンジン、電気自動車、ハイブリッドカー、燃料電池等の研究開発が進められている。 自動車エンジンに関しては、エネルギーの効果的な研究開発に総費用1億8000万クローナの内の5400万クローナが助成されている。 また、既存のエンジンに比べて30%も燃費の良いオットー・アトキンソン(Otto-Atkinson)エンジンとHCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition)エンジンの研究開発に助成が行なわれており、13のプロジェクト、総額1150万クローナが資金援助されている。これらのエンジンは、低燃費と言うだけではなく、環境及び健康に有害な排気物の低減にも効果がある。

そして、オットーエンジンの開発の際に問題とされている、燃料混合に伴うノッキングの発生を解消する事が、絶対必要条件と考えられている。この研究には13のプロジェクトが関わっており、1900万クローナ、100%の助成が行なわれている。

電気自動車に関しては、既存の自動車がエネルギー効率15%に比べて60%と言う高い効率を持っている事から、小型貨物車等を対象にして、その購入と管理運営に920万クローナが助成されている。小型車219台、小型貨物車86台がこの助成により購入されており、その多くは、市の業務用、パーキング管理会社、ビル掃除会社等に使用されている。

ハイブリッドカー、燃料電池技術利用車に関しては、19の研究開発プロジェクトがあり総額1億900万クローナの内、7200万クローナが助成されている。投資の大半はスウェーデンの自動車産業で占められているが、他方では研究者の博士号取得の奨励を目標に入れており、主だった工科大学、総合大学が研究に参加している。

電力生産部門に於いてのエネルギーの効果的な利用は、水力発電、風力発電、太陽電池、変電と配電について、研究開発が進められている。

1940年代、50年代、60年代に建設された水力発電所は、近年建設されたものに比べてエネルギー効率が劣っており、その改善が必要とされている。特に、新しいタービン技術の導入を必要としており、電力会社はタービン製作会社と協力して、その改善、変更を行なわなければならない。この研究プログラムに必要な総額は2050万クローナであるが、その40%である820万クローナが助成される。この改善による効果は、0.5~2.0TWhの増加が見込まれている。

パワーフォーマー(Powerformer)は、各種の電力生産に利用可能な新しい電力変換技術であるが、これを利用する事により、現在の電力生産よりも2%も向上すると見られており、年間で、1.3TWh/年の増加が試算されている。2ヶ所の水力発電所にこの技術導入を図る為、合計で2474万クローナの助成が行なわれた。

風力発電にもこのパワーフォーマーが導入されており、その名称はウインドフォーマー(Windformer)となっているが、この研究開発如何によって、大規模な海上風力発電団地の開発が左右されると見られている。この最初のデモンストレーションプラントは、3MW規模のものがゴットランド島において2002年春に設置され、各種のテストが繰り返される事になっている。ウインドフォーマーの研究開発の助成には、1890万クローナが充てられる。

太陽電池の開発は、非常に早いテンポで進んでおり、市場も安定した拡大方向にある。しかし、太陽電池のエネルギー・システムに関わる役割は、現状ではあまり重視されてないが、将来的には5~10TWh/年の電力供給能力があると見られている。この研究開発に対する助成は、合計で7000万クローナとなっている。

変電と配電についての研究開発は、新しいコンポーネントとして、ドライフォーマー(Dryformer)が開発されている。これは従来のトランスはオイルを使った絶縁を施しているが、ドライフォーマーは固体のポリマーによる絶縁を施したトランスである。このトランスは従来のトランスに比べて非常に変電所における設置が容易で、変電による電力損失が17%も低減出来る。このドライフォーマーのデモンストレーション・プロジェクトは、2003年秋に稼動を予定している。この研究開発費は総額で3230万クローナ、その内助成は710万クローナとなっている。

産業部門においては、スウェーデンは近年より効率的な生産が進み、生産量も増加の一途を辿っている。ここ30年の産業に於けるエネルギーの使用量は、最高時150TWh/年をピークとして、そしてその工業生産量は倍にまで増加している。ここ数年エネルギー使用量が抑えられている背景には、エネルギーの効率的な利用が効果をあげている結果といえる。毎年平均すると約2%強の効果があげられているが、これには長年に渡る国からの助成が研究、開発、実証試験に注ぎ込まれており、この部分に於ける国の役割は、かなり大きなものとなっている。

スウェーデンに於けるエネルギーの大口使用産業は、パルプ・製紙業、製鉄業、鋳造業、鉄工業等の製造業であるが、エネルギー庁は、エネルギーの使用頻度の激しいパルプ・製紙業、製鉄業、鋳造業、化学工業、その他数業種に絞って、助成を行なっている。

製鉄、製鋼産業は22TWh/年と言う大量のエネルギーを消費するが、ここでのエネルギー効率を図る事は、極めて重要な意味を持っている。エネ協では、この分野に於ける基礎研究、開発、実証試験に対して、製鉄業に於ける冶金プログラムに2300万クローナ(業界負担は6900万クローナ)、材料プログラムに3900万クローナ(業界負担は1億1700万クローナ)、MEFOS社のネットワークプログラムに1200万クローナ(業界負担は2550万クローナ)の助成を行なっている。これらによるエネルギー効率は、最高2.1TWh/年も上げられると見ているが、重複した効果もあるので、若干その数値を下回るだろうとしている。また、自然環境の改善、生産向上にも効果を上げている。

電気炉用のパワー・エレクトロニクス コンペセーションの開発助成 スウェーデンに於いては、年間110万トンの鉄屑を電気炉によって溶解しているが、これに使われるエネルギーは、0.65TWh/年となっている。現在使用されている電気炉の場合、その三分の一に当るエネルギーが、幾つかのプロセスで無駄に消滅しており、この実証試験プロジェクトに於いて、電圧の安定化による反応温度の上昇と溶解時間の短縮を通して、エネルギーの消滅を減少させようと言うもの。もし、この技術が活用される事になるとスウェーデンにある三分の四の電気炉がその対象となり、30~40GWh/年の省エネが実現できる事になる。エネ協ではこの新技術であるVSVC(Voltage Source Var Compensation)の実証試験施設に560万クローナを助成している。この技術は、鉄、銅、プラスティックの分野にも応用が可能と見られている。

パルプ、製紙産業は、最もエネルギーを使う産業分野であるが、その使用量は65TWh/年と産業全体の45%のエネルギーを消費している。この分野に於けるエネルギー効率の改善は、熱エネルギーの部分が大きな効果を上げているが、電気エネルギーに関しては、これまで思ったような効果が上がっていない。この10年間、施設拡充に伴う製紙生産は飛躍的な伸びを見せており、これにより電気エネルギーの消費も増大している。

この産業に於けるエネルギー効率の改善を図る事は、どのプロセスを経て行くか、つまり化学パルプ、砕木パルプと言った各プロセス、製紙の品質、生産規模に関わるプロセス等に大きく影響される。これは省エネ対策の重点を電気エネルギーに絞るのか、熱エネルギーに絞るのかと言った事にも大きく左右される。この事によって、節約できるエネルギーは、数十GWh/年から約1TWh/年と大きな開きを持っている。また、この事により精製ためのエネルギーは最高20%まで、調整が可能と見られている。エネ協は、Skogsindustrins Tekniska Forskningsinstitut (STFI)森林産業技術研究所の4プロジェクトに1570万クローナ(業界負担は2280万クローナ)、中部単科大学に490万クローナ(業界負担は1030万クローナ)の助成を行なっている。

化学産業は、12TWh/年と言うエネルギーの大口消費産業である。新技術によるエネルギーの節約は、25%まで高められると見られており、ヨーロッパに於いて5.5TWh/年のエネルギー節約が可能なポテンシャルがあるとしている。エネ協は、新膜細胞プロセスの実証試験に170万クローナの助成を行なっている。また、EUからの助成も1800万クローナ受けており、Akzo Nobel BaseChemicals社は、6030万クローナを投資、総額で8000万クローナのプロジェクトとなっている。この新膜細胞の工業化プロセスが実現すると省エネばかりでなく、環境汚染の危険を伴う水銀によるプロセスを全廃する事が出来る。

鋳造産業は、約1TWh/年と言うエネルギーを消費するが、他の業種に比べて生産品にかかるエネルギーコストは非常に高く、他の工業製品が1~2%のコストに対して、鋳造製品は10~15%とその10倍に達する。これは依然として、鋳造産業が非常に古い伝統的な工法で作業を行っている為である。エネ協は、鋳造事業連合会のエネルギー効率化のプログラムである、19のプロジェクトからなる鋳造プログラム1999~2002を支援する為、390万クローナ(業界負担は590万クローナ)を助成、マイクロウェ―ブ溶解炉の実証試験に40万クローナ(業界負担は150万クローナ)の助成行なっている。これらの効率化が実現すると最大で200GWh/年の省エネが可能となるが、業界では当初、このプログラムが終了以降の5年以内に最低でも10%、100GWh/年の達成を目標に掲げている。尚、これにより炭酸ガスの排出量は、年間約1万トン強低減出来ると見られている。

エネルギー需要短期予測

スウェーデンに於けるエネルギー総生産は、2001年から過去約30年間さかのぼると1970年の457TWh/年から2001年の619TWh/年と35%も増加している。しかし、原油、石油精製物の使用は、1970年77%であったのが、2001年には31%と減少し化石燃料への依存が、大幅に減少している。1970年代の石油の主な供給先は、家庭用として使われていたが、現在では、55%が運輸部門に使われている。ここ30年の間に化石燃料の依存から脱却すべく、電力エネルギーに関しては、原子力発電と水力発電を中心に稼動して、石油火力から脱却して電力を賄っており、現在火力発電は、連続的な寒波による大幅な電力需要に対応して輸入電力では手当が間に合わない時やダムの水不足、原子力発電のトラブルなどに対応して緊急用の予備電力としてしか機能していない。また、石炭、コークスなどの燃料も1970年から、4%の需要と横ばいの状況にあるが、バイオ燃料は、1970年9%から2001年16%へと大きく需要を伸ばしている。これは、産業に於けるバイオ燃料の使用や地域暖房システムでの利用が進んだ為で、それに、最近の家庭に於ける石油焚き暖房からペレット状のバイオ燃料による暖房への移行が、拍車をかけたと言っても良い。スウェーデンに於いて、化石燃料からの依存の減少は、バイオ燃料、風力発電、水力発電等の新エネルギーと呼ばれる伸びを見ても分かる。スウェーデンの総エネルギー需要が、ここ30年で35%も増加したわけだが、そのうちの29%は、新エネルギー分野の伸びによるものである。

しかし、エネルギー庁の短期エネルギー供給予測の中で、新エネルギー分野のバイオ燃料、泥炭、焼却用廃棄物、エタノール等については、2001年97TWh/年、2002年96TWh/年、2003年101TWh/年、2004年102TWh/年と増加の傾向が示されているが、商業用発電(水力、原子力、風力、発熱発電等)と余剰熱、ヒートポンプ、地域暖房システム等の熱利用及び電力輸入の供給は、2001年294TWh/年、2002年282TWh/年、2003年292TWh/年、2004年290TWh/年と減少すると見られている。

そして、エネルギー庁の2001年から2004年の短期エネルギー需要予測(2002年中期調査)によれば、2001年619TWh/年、2002年605TWh/年、2003年630TWh/年、2004年632TWh/年と予測されており緩やかな伸びとなっている。また、電力の短期需要予測(電力の輸出入は含まれない。)は、2001年150.48TWh/年、2002年148.3TWh/年、2003年150.8TWh/年、2004年151TWh/年と見られており、2001年から2004年までの電力使用伸び率は、0.5%弱と予想されている。スウェーデンに於ける電力消費は、産業と民生とでほぼ半々に分け合っており、産業側の電力消費が景気の動向に大きく左右されるのに比べて、民生用の電力消費は、近年の家電の多様化によって、多種の家電を使う増加傾向にあるが、一方に於いては、省エネタイプの家電の普及と省エネ型の住宅の開発により、今後減少していくと見られている。中央統計局の予測によれば、国民総生産の2001~2004年の成長率は、2001年1.2%、2002年1.6%、2003年2.4%、2004年2.6%と言う数字が示されている。その中で工業総生産の伸び率は、2001年-0.8%、2002年2.2%、2003年4.0%、2004年4.5%となっており、エネルギー庁の工業エネルギー需要予測によれば、2001年150TWh/年、2002年151TWh/年、2003年152TWh/年、2004年154TWh/年とその伸びが予測されている。ところが、昨年より基幹産業(特に重電、電子、通信産業等)を中心に軒並に人員削減を図って産業動向が振るわない状況にあり、最終的にはこの予測の下方修正が図られる可能性がある。

一方、生活消費の伸び率は中央統計局によると2001年0.2%、2002年1.8%、2003年2.7%、2004年2.8%となっており、エネルギー庁の民生用(住宅、サービス関連)のエネルギー需要予測によれば、2001年156TWh/年、2002年151TWh/年、2003年160TWh/年、2004年160TWh/年とその伸びが予測されている。しかし、昨年中期以降からの新車販売数の伸びと大型家電の販売数の伸びが顕著になっており、消費に関しては予想以上の上向きの傾向にある。

政府は2004年にエネルギー長期計画の見直しを図るが、最近の産業動向の不振、予想以上の消費の伸び、ダムの渇水、極寒状態によるエネルギー消費の増加等々、予測に反する不確定要素が多発しており、どの様にしてエネルギーの安定供給を図るのか。気候の変化によって不安定となっても小規模水力発電、風力発電等の新エネルギーの開発推進か。炭酸ガスの排出量が増加しても安定供給が出来るバイオ、泥炭、焼却用廃棄物燃料の活用か。公式に表明している早期のベルセベック原発2号機廃止の延期か。現状では更に長期の見通しに対する不透明感が強くなっている。

厳しい気候変化に深まる代替エネルギー不足

スウェーデンに於いては2002年から、バルセベック原発2号機の廃止問題についてエネルギー界では議論が沸騰している感があるが、2002年12月から2003年1月にかけてのスウェーデン全国の極寒状態、昨年の夏から秋にかけての晴天続きによる水不足が、電力供給に大きな影響を与えており、この需要のピーク時には予備電力として抱えている石油火力では間に合わず、国外からの電力を調達、急場を凌いだ状態が続いた。当然、電力市場は高騰し、産業を中心に節電を迫られたが、最悪の電力供給制限と言うシナリオは免れた。このような状況から、電力界、産業界、労働界からは、バルセベック原発2号機の廃止が現状では決して現実的ではないと見ており、2003年中にどうにかバルセベック原発2号機の廃止を結論付けようとする政府・社民党と異なる見解を示している。

2002年の夏から秋にかけての降水不足は、発電用ダムの貯水量の記録上において50年来なかったもので、昨年の水力発電量は、66TWh/年と前年の発電量78.6TWh/年に比べると16%と低く、既に発電量を制限しているのが分かる。この冬の極寒状態は、記録を作るほどの発電ピークではなかったが、数日と言う一時的なものではなく、数週間に渡って続き、電力供給ネットワークに負荷の掛かった状態が長期に渡った。今回の一番のピークは、25700MWhと2001年2月の27000MWhの記録には及ばない。スウェーデン電力ネットワークの供給能力は、全ての発電設備が正常に稼動した場合29000MWhと言われており、更に1800MWhの輸入電力が見込まれている。輸入電力のレコードは、2001年12月の4200MWhであるが、最大供給能力は5500MWhと見込まれている。スウェーデン最大手の電力会社ヴァッテンファル社(Vattenfall)は、予備電力として確保していた維持費の嵩む石油火力のステンウングスンド発電所820MWを停止すると表明していたが、今回の電力不足で再稼動を余儀なくされており、バルセベック原発2号機の廃止が現実のものとなれば、更に現状では電力不足が予想され、予備電力以上の役割を持たされる可能性も無きにしも非ずと言う環境にある。

スウェーデンのエネルギー政策の根幹は、化石燃料の依存からの脱却がもっとも重要な位置を占めており、これは取りも直さず環境問題と密接に関わる事から、バイオ燃料を使った多目的な発熱発電が奨励されても、石油火力の発電所の定常的な稼動は、エネルギー政策上認めたくないものである。しかし、火力発電が予備電力とは言え、ピークの緊急時に立ち上がりの早い強力な助っ人である。2001年の発電量を種類別に見ると水力発電78.6TWh/年、原子力発電69.2TWh/年、風力発電0.5TWh/年、石油火力発電9.5TWh/年、トータルでは、157.7TWh/年となっている。2002年は、水力発電66TWh/年、原子力発電65.6TWh/年、風力発電0.5TWh/年、石油火力発電10.9TWh/年、トータルでは、143TWh/年となっている。この様に定常運転はしていないにも関わらず、石油火力発電の全体に占める割合は2001年が6%、2002年は7.6%と今や建設ブームになりつつある風力発電とは、二桁も違う発電量を誇る。原子力発電に代わる次世代の新エネルギー源として、色々模索されてはいるものの、スウェーデンの発電量の約半分を占める原子力発電の肩代わりとなる強力な代替エネルギーは、無いに等しい。現在、政府が推進している風力発電の2010年の達成目標を見ても10TWhと現状の石油火力発電が供給している発電量と変わらず、予備電力の域を出ていない事が分かる。

政府は今後の新エネルギー源として小型の水力発電と風力発電そしてバイオ燃料を活用した発熱発電の開発推進を行おうとしているが、電力の安定供給の面から考えると水力発電と風力発電は気候に大きく作用されるため、予備電力の比重が高まる可能性があり、非常に維持費の掛かる石油火力発電を削減したい意向のある電力業界は、それとは逆行する投資を迫られる事になる。スウェーデンに於ける火力発電の設備規模は、トータルで約1800MWになるがその内ガスタービンは1000MWとなっている。しかし、この発電コストは、75オーレ~1クローナ/kWhと通常の発電コストの4~5倍となり、非常に高価な電力を需要側は買わされる事が分かる。予備電力に頼らない施策としては、電力の輸入があげられるが、その輸入先の50%近くがデンマーク、そして残りがポーランド、ドイツ、ノルウェーからとなっている。ヴァッテンファル社は、予備電力を廃止する方向でその代替としてポーランドの石炭火力発電所を買収、スウェーデン、ポーランド間の海底ケーブルを設置して電力網ネットワークを拡大した。しかし、デンマークの主要電力も石炭火力であり、輸入電力の多くが環境汚染を招く石炭火力による電力と言う事から、環境団体を中心に汚い電力を輸入するなと言う声が聞かれ、グリーン・エネルギーを拡大しようと言う電力会社の建前から反する結果となっている。今や、最も安価なエネルギー源となりつつある石炭は、環境汚染の代名詞の様に扱われているが、環境規制の厳しいスウェーデンの石炭火力は、デンマークやポーランドのものと比較にならないほどクリーンであると言う。国内において化石燃料依存からの脱却と言いながら、輸入電力の多くが環境を汚す既存の石炭火力に依存しているのであれば、国内によりクリーンな石炭火力発電所を設置すべきと言うという声も聞かれる。

この様にして、バルセベック原発2号機の廃止、長期の渇水期と言った要因により、実用化に長期の時間を要する新エネルギー政策、省エネ政策の現状では、スウェーデンにおける二大電力供給源である原子力と水力が不安定な供給体制に陥った場合は、寒波時の電力ピーク需要に対応出来なくなる可能性も出てくるため、化石燃料エネルギー依存への逆戻りを招きかねない。

電力消費は増加傾向に 21世紀は風力とバイオが新エネの重要な柱?

スウェーデン・エネルギー事業者連(Svenska Energi)の最新の統計によると、2001年の電力消費は、1998年に記録した154.6TWhを上回る157.6TWhという新記録となった。その要因として、2001年の大半に於ける経済成長と石油の高騰によるオイル焚きの暖房から電気暖房への移行が挙げられている。

その電力生産の内訳は、水力発電が、78.3TWh22%増、風力発電が2000年の0.4TWhから2001年は0.5TWhに増加、原子力発電はバルセベック1号機が閉鎖されているにも関わらず、記録的な発電量であった1991年の69.2TWhに近づく69.0TWhとなった。

電力価格は北欧電力市場のスポット価格の平均を見ると2000年の12.0オーレ/kWhから2001年は21.1オーレ/kWhと大幅な価格上昇となっている。

2001年は風力発電が一番騒がれた年でもある。スウェーデンに於いては、ここ数年が大型風力発電のプロトタイプからコマーシャルプラントへの過渡期の時期であり、産業大臣の風力発電の積極的な開発発言も手伝って、スウェーデン各地で建設計画が次々と発表された。その中で最も巨大なプロジェクトが、ボーフス・エネルギー社(Bohus Energi)が計画している、北スウェーデンのノールボッテン地方の海岸線に2727基もの風力発電を建設しようというものである。もし、このプロジェクトが実施されると総工費540億クローナ、20TWhと言う現在スウェーデンの原発の三分の一に当たる電力を供給する世界最大級の風力発電団地となる。

しかしながら、クリーンで環境に優しいと言われる風力発電に問題が無い訳ではない。例えば、電力会社が2MW、140mの高さの風力発電を3基建設計画していたハルムスタード市(Halmstad)では、自然の景観を損ねるとの理由から、議会の全会一致で建設不許可の決定を下した。但し、風力発電そのものに反対している訳ではなく、小規模のものであれば再考の余地はあるとの含みを残しての決定である。

一方では大型化していく風力発電であるが、その中で大型風力発電を持つ15の発電会社が、最近電力生産を抑えている傾向にあると言う。その理由として、1.5MW規模の風力発電所に与えられる政府からの財政補助を明らかに意識したものとエネルギー協会では見ている。1.5MW規模の風力発電の年間収入は190万クローナと言われているが、その内の120万クローナが政府からの財政補助となっており、非常に財政補助に対する依存度が高い。エネ協では、これまで風力発電の稼動を抑えると言う例は稀だっただけに、この傾向が増える事に憂慮しており、大型の風力発電開発を推進していく立場から、大型の風力発電にも財政補助が得られるよう1.5MW規模という制限を早急に取り払うよう政府に要請していく考えである。

また、環境保護局は、ハランド地方(Halland)の海岸線の2箇所に計130基の風力発電所の建設計画について、水鳥、魚類、海底生物に大きな影響を及ぼす恐れがあるとの見解から、否定的な考え方を示している。これは、大規模な海上風力発電所の建設計画について、海面下の生態系の影響に関する知識が乏しく、充分な判断材料が無いためである。環境保護局としては、大規模な海上風力発電所の建設計画を立てる前に、充分な調査研究が必要であり、これには多額の予算と長い年月が掛かるだろうとしている。

一方、バイオ・エネルギーの活用は、地域暖房システムを中心に展開されているが、この分野では圧倒的な実績を示している事が分かる。2001年に於ける地域暖房システムのエネルギー源の分布を見てみると、バイオ・エネルギーは48%(約24TWh)、化石燃料14%、電気19%、その他19%とバイオ・エネルギーが最も大きな供給源となっている。そのバイオ・エネルギーの内訳を見ると木燃料58%、ゴミ24%、泥炭10%、松脂6%、バイオガス1%となっている。市別に見るとバイオ・エネルギーの消費の多い5都市は、ストックホルム2.6TWh、ウプサラ1.5TWh、ヨーテボリ1.1TWh、リンショーピング1.0TWh、オレブロ0.8TWhとなっている。また、バイオ・エネルギーの発電への使用は、1999年の時点で3.6TWhとなっており、2001年では4.0TWhを越えていると思われる。他方では、産業用のエネルギー源として、バイオ・エネルギーの活用は古くから行なわれているが、これは生産過程で出てくる余剰資源として有効活用しているためであり、新たにバイオ・エネルギーだからと言う理由で多くの産業がこの使用に切り替えて行くと言う傾向には無い。1999年の時点では、バイオ・エネルギーが52.2TWhと全体のエネルギー源の三分の一を占めているが、今後ある程度の使用の伸びはあるものの、ほぼこの割合で推移して行くものと思われている。

この様に、スウェーデンに於ける新エネルギーの開発は、原発、化石燃料の依存からの脱皮と言う基本的な考えの中から、広い国土と海岸線、豊富な森林資源に恵まれて、大型風力発電開発、バイオ・エネルギーの熱源開発或いは動力源として活用する事が、現実味もあり重要度を増して来ている。しかし、これらをもって将来の代替エネルギーとするには、まだまだ不足しており、特に原発を全廃するには、現在開発が禁止されて手付かずの北スウェーデンにある4つの河川の水力開発は不可欠であるとの論議も再燃している。短期的には、このところの電力需要の伸びから見て、2002~2003年の冬にかけて既に予定されているオスカーシャム1号の一時停止に因る電力不足が上げられ、400~600MWのリザーブを必要としている。配電会社のスウェーデン・電力網とエネ協では、協力してこの問題についての解決策を本年10月1日までに出さなければならない。21世紀の幕開けの年だった2001年は、その元年にふさわしく新エネルギーの積極開発が具体的に進められたが、一方ではエネルギー不足が現実になりつつある現状を踏まえると、厳しい前途が待ち構えていると言わざるを得ない。

エネルギー消費と炭酸ガス排出量の低減

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの中で、炭酸ガスの排出を抑えるのが、その膨大な量からして地球温暖化防止には最も効果的と言われている。スウェーデンの場合、エネルギー問題に絡めていち早くこの取り組みがなされた事から、非常に効果的な成果を上げている。

エネルギー庁の統計によると工業生産部門と国際輸送部門を除くエネルギー部門の炭酸ガス排出量は、1970年から1979年の間に約15%減少し、1980年から1999年の間には、ほぼ30%の減少をしている。これは、消費者及び供給者の両者が石油エネルギー利用から電気エネルギー利用に移行させた事が、大きな要因としている。一方、国内輸送部門の炭酸ガス排出量は、1970年から1999年の間にほぼ40%も増加している。しかし、これをトータルの排出量で見ると1990年から1997年の変化は、52百万トンから52.8百万トンと1.7%の増加に留まっている。

だが生活部門に於けるエネルギー消費は減少している訳ではなく、住宅部門とサービス部門のエネルギー消費は1990年150TWh、1997年153TWh、1999年151TWhとほぼ横ばいに近い。

この中で過去、炭酸ガスの排出量が多かった暖房・温水供給について中央統計局の統計によれば、石油燃料の使用量が、次の統計を見ても圧倒的に減少している事が分かる。オイル焚きによる暖房・温水供給の燃料使用量は1979年1889k㎥、1984年1072k㎥、1989年500k㎥、1994年451k㎥、1999年295k㎥と信じられない速度で減少している。これは日本のようにオイル焚きのビル暖房、家庭における石油ストーブ、石油ファンヒーターが主力の現状とは大違いである。

スウェーデンにおいて最も脱石油化が進んでいる地域暖房・温水供給システムは、近年バイオ燃料及びゴミ焼却熱によってほとんど賄われているが、同じ中央統計局の統計によれば、そのエネルギー消費量は1979年13694GWh、1984年15664GWh、1989年18578GWh、1994年21411GWh、1999年22321GWhと着実に伸びている。また、電気による暖房(多くは一般家庭が中心)は1979年374GWh、1984年407GWh、1989年468GWh、1994年1303GWh、1999年1249GWhとなっている。そして、その他のセントラルヒーティングは、1979年93GWh、1984年756GWh、1989年528GWh、1994年704GWh、1999年294GWhと一時は増加の傾向にあったが、近年は減少している。

エネルギー庁の炭酸ガス排出に関わるエネルギー消費の過去と将来予測によると、産業部門が1997年153TWh、2010年172TWh、運輸部門が1997年76TWh、2010年86TWh、住宅部門、サービス部門、その他が1997年153TWh、2010年157TWh、国際輸送部門が1997年23TWh、2010年32TWh、と言う消費予測が出されている。

また、エネルギー供給源の種類別では、石油類(石油生成物)が1997年201TWh、2010年213TWh、天然ガスと都市ガスが1997年9TWh、2010年9TWh、石炭とコークスが1997年27TWh、2010年27TWh、水力発電(ネット)が1997年68.2TWh、2010年68.6TWh、原発(ネット)が1997年66.9TWh、2010年63.6TWh、としており、新エネ関係では風力発電(ネット)が1997年0.2TWh、2010年3.9TWh、バイオマス燃料と泥炭その他が1997年90TWh、2010年114TWh、ゴミ焼却熱とボイラー熱が1997年9TWh、2010年9TWhと言う供給予測が出されている。

炭酸ガス排出量の過去と将来予測は、トータルの排出量が1990年52百万トン、1997年52.8百万トン1.7%増、2010年(工業生産の伸び率が年2.3%の場合)52.9百万トン1.8%増(1990年と比較して)、また(工業生産の伸び率が年1.7%の場合)50.9百万トン2.1%減(1990年と比較して)、そして(工業生産の伸び率が年3%の場合)55.2百万トン6.2%増(1990年と比較して)としている。

その炭酸ガス排出量の内訳を見ると産業部門が1990年12.1百万トン、1997年12.2百万トン0.9%増、2010年(工業生産の伸び率が年2.3%の場合)13.2百万トン8.6%増(1990年と比較して)、運輸部門が1990年19.3百万トン、1997年20.5百万トン6.4%増、2010年(工業生産の伸び率が年2.3%の場合)21.1百万トン9.5%増(1990年と比較して)、住宅部門とサービス部門が1990年11.6百万トン、1997年9.4百万トン18.3%減、2010年(工業生産の伸び率が年2.3%の場合)7.8百万トン32.6%減(1990年と比較して)、電力生産部門が1990年1.4百万トン、1997年2.9百万トン108.8%増、2010年(工業生産の伸び率が年2.3%の場合)2.7百万トン96.7%増(1990年と比較して)、地域暖房部門が1990年6.2百万トン、1997年6.1百万トン2.7%減、2010年(工業生産の伸び率が年2.3%の場合)6.3百万トン1.6%増(1990年と比較して)、製油所における石油の使用が1990年1.4百万トン、1997年1.7百万トン22.2%増、2010年(工業生産の伸び率が年2.3%の場合)1.8百万トン30.4%増(1990年と比較して)としている。

このように、住宅部門とサービス部門を除く全ての部門が、炭酸ガス排出の増加を示しているが、エネルギー消費第二位の住宅部門とサービス部門の大幅な炭酸ガス排出の低減によって、総体的な炭酸ガスの排出が抑えられている事が分かる。住宅部門とサービス部門においては、現在積極的に化石エネルギーからの脱皮が図られており、ただ単に電力利用に切り替えるだけではなく、具体的には新エネに代表されるグリーン電力の積極使用、断熱効果の高い省エネタイプの住宅の建設、省エネタイプの電化製品の使用と言うように、出来るだけエネルギーを使わないように、使った熱は出来るだけ逃がさず有効に使っていくと言った方向付けが、大幅な炭酸ガス排出の低減に繋がっていると言えよう。

炭酸ガス排出量の短期予測は増加の傾向に
新エネのバイオ燃料の大量消費が主な原因?

コンサルタント会社Profu社は、スウェーデン・エネルギー庁の委託を受けてエネルギー・CO2税の効果について調査を行ってきたが、スウェーデンのエネルギー・CO2税は他国に比べて非常に効果的であるとの調査報告を提出している。

ところが、エネルギー庁の2001年から2004年の炭酸ガス排出量短期予測によるとその総排出量(国際航路の船舶は除く)は、2001年5140万トン、2002年5150万トン、2003年5350万トン、2004年5360万トンとこの4年間で220万トンの増加が予測され、4.3%も上昇する。その内訳(%は2001年との比較)は、電力生産部門が2001年240万トン、2002年280万トン(16.6%増)、2003年320万トン(33.3%増)、2004年280万トン(16.6%増)、地域暖房システムは、2001年460万トン、2002年450万トン(2.1%減)、2003年520万トン(13%増)、2004年530万トン(15.2%増)、工業部門は、2001年1140万トン、2002年1170万トン(2%増)、2003年1190万トン(4.3%増)、2004年1200万トン(5.2%増)、住宅とサービス部門は、2001年770万トン、2002年710万トン(7.7%減)、2003年740万トン(3.8%減)、2004年720万トン(6.4%減)、運輸部門は、2001年2350万トン、2002年2360万トン(0.4%増)、2003年2400万トン(2.1%増)、2004年2460万トン(4.6%増)、石油精製部門は、2001年170万トン、2002年180万トン(5.8%増)、2003年180万トン(5.8%増)、2004年180万トン(5.8%増)と予測されている。

このように、住宅とサービス部門を除いては全て増加と言う数字を示しており、1990年の炭酸ガス総排出量から見ると約1%の増加が予測されている。1999年まで続いて来た減少傾向に歯止めが掛かった事について、エネルギー庁では景気の回復に伴なう各産業の増産がエネルギー消費(特に石炭とコークス)を促したためとそれを主な理由としている。また、地域暖房システムの炭酸ガス排出増加に付いては、多目的な発熱発電を使っての地域暖房を行っている事から、その燃料には、化石燃料に代わって、バイオ燃料と焼却可能なゴミが多用されて来ている。しかし、これはグリーンエネルギーと言われている森林資源を中心としたバイオ燃料が原因ではなく、泥炭とゴミに因るものと言う。各燃料資源別の炭酸ガス排出量は、石炭330g/kWh、石油280g/kWh、天然ガス202g/kWh、水素ガス0g/kWh、泥炭374g/kWh、薪352g/kWh、原発用ウラン15g/kWhと泥炭と薪が石炭よりも多い炭酸ガスの排出量となっている。エネルギー庁の評価では、この問題となる最も炭酸ガスの排出が多い泥炭と薪が、長期的な自然のサイクルの観点からすると、そのマイナス要因は相殺されると言う。そうは言っても短期的に見れば現実的に炭酸ガスの排出量を増やす要因を作っていると言わざるをえない事から、地域暖房システムの改善が必要となる。スウェーデンの地域暖房システムの場合、メーカーによってその性能に大きな開きがあり、近年設置された10基のプラントを比較してみてもその炭酸ガスの排出量は通常の排出量では性能の良いプラントで110g/kWh、最悪のものでフル稼働時に200g/kWhと差がある。それでも、石油焚きの地域暖房システムの300g/kWhに比べてかなり低い数値となっており、残された石油焚きのプラントからの切替は、急務と言ってよい。また、最新プラントの性能に見られるように、性能の劣るプラントの45%、石油焚きのプラントの65~70%も低い排出量に抑えられる事から、今後も地域暖房システムには改善の余地が残されており、業界としては、炭酸ガスの排出量の増加をあくまでも一時的な現象であり、今後随時改善されて行くと見ている。何れにしろ、昨年末から続いた厳冬状態により、暖房を中心としてエネルギー消費が伸びており、予測よりも2003年については炭酸ガスの排出量の上方修正をする必要が出てくるだろう。

2003年よりグリーン電力の強制購入

電力業界は、電力料金が自由市場になって以来、その料金体系が複雑のなっているが、更に電力販売に関して2003年にはグリーン電力の認定証を出す事が義務付けられ、更に料金体系が複雑になる可能性が出てきた。

これは、グリーン電力に関する審議会がビヨン・ローセングレーン産業相に提出したもので、電力料金によって生産品の価格が影響しやすい産業や電力を大消費する産業を除く全ての利用者に、一定程度のグリーン電力を購入する様義務付けており、それによって電力配電会社は、そのグリーン電力の出所を証明しその証書を出す事を義務付けている。この提案は、来年の政府エネルギー政策案に盛り込まれると見られている。

スウェーデンは、グリーン電力の生産を2010年までに10TWhにする目標を掲げているが、これには、風力発電、太陽発電、地熱発電、バイオ燃料発電、波力発電そして小型の水力発電が考えられている。また、2002年以降から稼動する通常の水力発電にもグリーン電力の認定証を与えるとしている。

このシステムのグリーン電力の認定証を販売するに当たって、政府は財政援助を行っているが、これは具体的には投資援助、稼動助成そして環境ボーナスとして電力生産者に与えられている。今年の援助額は総額6億2000万クローナに達している。そして電力配電会社は、グリーン電力の価格を公示する事が義務付けられている。しかし、これによって料金体系は更に複雑になると考えられている。

グリーン電力の認定証を義務付ける目的は、消費者にどのようなグリーン電力が使われ、どれぐらいグリーン電力を消費したかを目に見えて理解してもらう事にあると言う。そこで問題となるのは、電力配電会社が安いグリーン電力探しに走る事である。しかしながら、このシステムではどの新エネルギー電力も政府の同じ財政援助の条件で競争が図られる為、元々安い電力が供給できる新エネルギー源に買い手が集中して、その部分にだけ開発が集中する恐れがあり、多角的に新エネルギー源を開発して行こうと言う芽を潰してしまう危険性が挙げられている。これによる電力料金の値上がりは、1オーレ/KWhと試算されている。特に環境保護協会は、経済性を優先する事から、風力発電の大型化が進み、これにより多くの中小の風力発電開発会社は、倒産に追い込まれるとしている。

ところで、グリーン電力として定番になりつつある風力発電、大型のプロジェクトが各地で計画され、一見開発に拍車を掛けているように見える今日この頃だが、海上発電所計画を多く有する南スウェーデンでは、各地で反対の声が出始めている。更に、過疎化と不況で悩むノールランド(スウェーデンの北部)でも、地域の活性化に繋がると見られた風力発電開発が、反対に地域経済の足を引っ張る可能性が出てきた。

大型の風力発電建設が海岸沿い、山岳地区に計画されているノールランドでは、どのような設備投資が必要か否かに関わらず、周辺の電力網所有者は、風力発電所からの電力を風力発電法によって、受けなければならない。これは取りも直さず、電力コストに跳ね返り周辺地域の電力消費者に負担増を強いる事になる。

もし、風力発電所が1.5MWよりも小さい出力の発電所であれば、電力法によって電力網に組み込むための送電線、変電所等の建設費を負担する必要が無く、接続料金と年間でも費用が非常に安い電力計量費、計算費だけの負担となっている。風力発電の多くは、3~10基のプラントが集まっている事が多く、総量では優に1.5MWを超える。しかし、風力発電法によると各プラントごとに1発電所と認めるため、それらの設備投資への費用負担を免除される。

ロレンツ・アンデション(Lorentz Andersson)県知事は、ノールランドの場合、新たな電力を必要としていない為、他の地域の需要のために余計な費用負担による電気料金の値上がりは、ただでさえ不況で喘ぐノールランド地方の経済を更に圧迫するものと反発。アンデッシュ・スンドストルーム(Anders Sundström)前エネルギー相は、過疎地の住民が発電所建設によって経済的な被害を被るのは、筋が通らない。これは全く私の責任と言わねばならないと語っている。

たたむ

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