Energy problem

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スウェーデンに於ける新エネルギーの開発
(バイオ、ごみ、風力、太陽、地熱、燃料電池、その他)    (2002年 牧野裕寿)

エネルギーとしての森林資源とごみ資源

2002年の総選挙の結果、与党の社民党と支持政党の過半数獲得により、政権の安泰と見られたが、環境党の入閣要求といった思わぬ壁に出くわし、一党による閣僚人事を行いたい社民党は、政策面で譲歩をせざるを得なくなった。特にエネルギーの税制面で見ると次年度の所謂グリーン・タックスは、当初、社民党と左翼党の間で26億クローナと言う事で合意に達していたが、環境党は、これに対して30億クローナ若しくは4年間で120億クローナのグリーン・タックスを求めている。

もし、環境党の要求どおり、グリーン・タックスが30億クローナに引き上げられた場合、エネルギー税として電気では、2.1オーレ/kwhであったものが2.5オーレ/kwhになる。炭酸ガス税は、石油の場合1キロあたり11オーレの上昇であったものが、13オーレとなり、1キロあたり76オーレの炭酸ガス税が課せられる事になる。これは、通常の個人住宅の場合、電気暖房を使用すると年間750クローナの費用の上昇と試算されていたものが、900クローナまで上昇、また、オイル焚きの暖房になると1立方メートルあたりコストが420クローナの上昇と試算されていたものが、500クローナまで上昇する事になり、これまでよりも年間で約1500クローナのコスト高となる。

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スウェーデンは、日本とは正反対に冬のエネルギー消費がピークとなり、熱源の確保に化石燃料からの脱皮が重要な課題となっている。その中でもバイオエネルギーは、これからの熱源として飛躍的な利用の伸びを示している。森林資源から出る余剰生産物は、正にグリーンなバイオエネルギーとして、エネルギー税、炭酸ガス税の掛からない有望なエネルギー資源と言える。これらを直接燃焼させる地域暖房システムや発熱発電とは別に、加工してペレットにした家庭用燃料が、石油価格の高騰も手伝って、需要を伸ばしている。従来のオイル焚きの暖房用ボイラーは、若干の変更を加えるだけでペレット用のボイラーに出来るため、安価なペレット燃料に切り替える家庭が多くなっている。90年代、過剰気味であったペレット燃料の原材料となる製材所の切り屑は、今や場所によっては不足する事態と成る程需要が増加している。1996年以前、2社しかなかったペレット製造会社は、現在、24社に登り生産規模も大きくなっている。年間の総生産量は80万トンとなっており、ヨーロッパ全体の需要が、120万トンと言う事を見ても、現在のスウェーデンの生産量は、極めて大きいと言える。現状ではペレットに使用出来る未利用の原材料を取り込んだ場合、120万トン~150万トンまで拡大出来ると見ている。また、ペレット産業がペレット原材料として未だ考えていない、森林伐採時の余剰生産物(パルプ産業も利用しない部分)を原材料に入れた場合、年間1400万トンのペレットの生産が可能と言う。

現状でのペレット価格は、ある大手の販売会社の場合2001年8月の1トン当たりのペレット価格が、1500クローナであったのに、今年は、1850クローナに価格が上昇し、23.3%と言う大幅な値上がりとなっている。理由は、原材料の価格上昇としており、毎年この調子で値上がりする事はないと販売会社では見ているが、全国平均でも約20%の値上がりを来たしている。これをエネルギー換算で見てみると140~160クローナ/Mwhとなっており、今後200クローナ/Mwhまで価格が上昇するだろうと見られているが、その後は価格が安定するとペレット産業界では見ている。それでも石油の70オーレ/kwhに比べてペレットは現在約38オーレ/kwhと石油の約半分のコストで済み、ここ数年で個人住宅の暖房は、オイル焚きからペレット使用に全て代わるかもしれないとまで言われている。石油会社もペレット製造販売に乗り出すなど、暖房などの熱源利用部門での化石燃料離れが加速しつつある。

一方、2003年6月から焼却可能なゴミの野積みが禁止され、ゴミ焼却による暖房と発電が積極的に図られているが、施設不足のため、禁止措置に猶予が与えられており、ゴミの野積みが引続き行われているのが現状となっている。現在、年間排出されるゴミの量は約500万トン、そしてゴミ焼却は年間240万トン、その内家庭からのゴミは150万トンとなっている。スウェーデン全国で、地域暖房、発電設備を伴なった13箇所の新焼却施設と16箇所の既存の焼却施設の拡張が計画されているが、これら全てが完成すると2006年には、460万トンのゴミ焼却能力となり、現在より約倍の規模の施設が全国に点在する事になる。現在の予測では、2007年に施設の不足が解消されるだろうと見られているが、計画されている13の新規焼却施設が、予定通り着工されるか未だ不確定要素が多いと言う。今日、ゴミ処理のコストは、400~800クローナ/トンと言われており、20万トンのゴミから400Gwhの発熱、100Gwhの発電が得られる。

国外からの「新エネルギー源」、ゴミの受け入れに危機?!

2002年までスウェーデンの多くの地方自治体は、ヨーロッパの各国から危険な物質の少ない燃えるゴミの受け入れを行なって来たが、ここに来てエネルギー源として供給を受けながら、ゴミ処理料金まで取れる有難いこのゴミが、受け入れられ無くなる事態に直面した。

これは、2003年よりEU規則とスウェーデンのゴミ処理に関する新法の施行により、焼却可能な廃棄物は保管を目的とした集積が全面禁止となる。(2005年からは、有機系廃棄物の集積が全面禁止)これにより、現在国内の廃棄物集積場に大量に野積みにされ、最低でも100万トンはあると言われている焼却可能な廃棄物を、全て分別して焼却処分しなければならないため、これを実施すると国内にある焼却施設では消化出来ないほどの量となるため、技術的にも国外からの廃棄物の受け入れは不可能となる。

スウェーデンのおいては、地域熱供給は欠かせない施設であるが、近年の化石燃料依存からの脱皮傾向に合わせて、バイオ燃料の使用や高温ゴミ焼却に伴うエネルギーの多目的利用が定着しつつある。(1970年代100%オイル焚きであった地域熱供給は、現在10%までに下がっている。)つまり、温水供給、暖房熱源だけでなく、電力供給を含めた発電設備を新しい施設に設置させている。また、既存の施設についても発電設備を順次設置して行くよう改善が進められている。

このような中で、スウェーデン国内の森林などから供給されるバイオ燃料に比べると、ヨーロッパ各国から供給される廃棄物燃料は、物に依っては十分の一のコストである事から、この安価なエネルギー源は、財政難に苦しむ地方自治体にとって、重要なエネルギー資源になりつつあった。スウェーデン国内で生産される各バイオ燃料コストは、100~150kr/Mwh、一方オランダから搬入される、燃えるゴミを破砕して作られた燃料ペレットは、20~30kr/Mwh、裁断された使用済みタイヤは、12~14kr/Mwhと比べ物にならないほどのコストの安さである。廃棄物の中でもっとも上質の燃料は、線路の枕木と言われ、ドイツでは危険廃棄物として焼却は禁止されているが、スウェーデンにおいては危険物として指定されていないため、例えば、スウェーデンにおいて最大の地域熱供給施設持つソーデルエネルギー社では、年間4万トンもの枕木をドイツから輸入している。しかし、これも来年からは、環境裁判所の裁定により、規制が加えられる事になった。つまり、新ガイドラインに沿って高温燃焼ボイラーの使用とより高性能の排煙、排ガスの除去装置を設置し環境基準遵守が義務付けられる。

このような中で、スウェーデン国内の森林などから供給されるバイオ燃料に比べると、ヨーロッパ各国から供給される廃棄物燃料は、物に依っては十分の一のコストである事から、この安価なエネルギー源は、財政難に苦しむ地方自治体にとって、重要なエネルギー資源になりつつあった。スウェーデン国内で生産される各バイオ燃料コストは、100~150kr/Mwh、一方オランダから搬入される、燃えるゴミを破砕して作られた燃料ペレットは、20~30kr/Mwh、裁断された使用済みタイヤは、12~14kr/Mwhと比べ物にならないほどのコストの安さである。廃棄物の中でもっとも上質の燃料は、線路の枕木と言われ、ドイツでは危険廃棄物として焼却は禁止されているが、スウェーデンにおいては危険物として指定されていないため、例えば、スウェーデンにおいて最大の地域熱供給施設持つソーデルエネルギー社では、年間4万トンもの枕木をドイツから輸入している。しかし、これも来年からは、環境裁判所の裁定により、規制が加えられる事になった。つまり、新ガイドラインに沿って高温燃焼ボイラーの使用とより高性能の排煙、排ガスの除去装置を設置し環境基準遵守が義務付けられる。

風力発電のメッカ、ゴットランド島

世界は近年にない風力発電のブームを迎えており、各地で建設計画が相次いでいる。風力発電の世界の発電量は、2001年において62TWhを超え、これはスウェーデンの全ての原発の発電量に匹敵する。2001年は35%の伸び率となり、過去4年間連続して30%を超える伸び率となっている。2002年には更に20TWh強の増加が見込まれている。

世界は近年にない風力発電のブームを迎えており、各地で建設計画が相次いでいる。風力発電の世界の発電量は、2001年において62TWhを超え、これはスウェーデンの全ての原発の発電量に匹敵する。2001年は35%の伸び率となり、過去4年間連続して30%を超える伸び率となっている。2002年には更に20TWh強の増加が見込まれている。

このスウェーデンの代表的な風力発電パークであるネースウッデンのインフォメーションセンターを訪ねて、風力発電に関する実情をインフォメーション・チーフのAnders Andersson氏に伺った。ここネースウッデンの風力発電は20年の歴史があり、スウェーデンの風力発電開発の草分け的存在と言う。従って、ここに設置されている大小のプラントは、言わば実証のためのパイロットプラントと言って良く、実に色々なタイプのプラントが点在している。当然、最近の海上風力発電の趨勢に鑑みて、6基のプラントが半島の先の海上に設置されている。ゴットランドと言うのは元々風力の利用が古くから行われており、この島を旅すると至る所で朽ちた昔の風車の姿を目にする事が出来る。全く山の無いこの島は、一年中良好な風が吹いており、風力発電には最適な場所と言って良い。特に、ネースウッデンは海に突き出た半島になっており、ゴットランドの中でも一番風が強く吹く場所と言う。また、付近に人家が少ないのも発電所の建設を容易にしている。100基余りある風力発電所の所有者は、実に多彩で全てのカテゴリーの人達が所有しており、例えば地域住民の組合、歯医者さん、配管屋さん、自治体、電力会社とそれぞれ将来的な投資として、風力発電を捉えている。風力発電の耐用年数は、25年との事だが、これまでの経験でジェネレーターのギヤーは15年しかもたないため、途中交換を余儀なくされていると言う。実際、今回ネースウッデンに訪れた時も1基プロペラが外されてギヤーの交換中であった。風力発電の減価償却は17年との事である。

Andersson氏は、新エネルギー源としての風力発電のスウェーデンにおける効果は、デンマークほど劇的なものにはなっていないと言う。それはスウェーデンの電力エネルギー源である原発、水力とも元々クリーンエネルギーであることから、環境面での効果は薄い。しかしデンマークの場合、石炭火力による電力エネルギーを風力発電に切り替えると言う事で、炭酸ガスの排出を押さえて目に見える効果があるため、風力発電の開発促進に拍車がかかると言う。スウェーデンも風力発電の開発は20年以上の歴史があるが、風力発電が商業化したプラントになったのは1995年からで、これも全くの商業化したベースではなく、政府の助成なくしては既存のエネルギー源に太刀打ちできない。

Andersson氏は、新エネルギー源としての風力発電のスウェーデンにおける効果は、デンマークほど劇的なものにはなっていないと言う。それはスウェーデンの電力エネルギー源である原発、水力とも元々クリーンエネルギーであることから、環境面での効果は薄い。しかしデンマークの場合、石炭火力による電力エネルギーを風力発電に切り替えると言う事で、炭酸ガスの排出を押さえて目に見える効果があるため、風力発電の開発促進に拍車がかかると言う。スウェーデンも風力発電の開発は20年以上の歴史があるが、風力発電が商業化したプラントになったのは1995年からで、これも全くの商業化したベースではなく、政府の助成なくしては既存のエネルギー源に太刀打ちできない。

Andersson氏の案内で、世界最大と言われる巨大なNäsuddenⅡの屋上にあがり、実際に風車も回しながらその大きさと凄さを実感させてもらったが、最近のプラントに比べると機器もコンピュータも古くて動作も鈍いと言うものの、恐怖感を味合う振動や耳を覆いたくなるような騒音もなく、実に安定した感じを受けた。

ネースウッデンはスウェーデンにおける風力発電開発の先駆的な役割を担ってきたわけだが、ここへ来て大手重電機メーカーのABB社が、風力発電の開発から撤退すると言う事態をむかえている。2年前の夏から進めて来たNäsuddenⅢ3.5MWの建設を今年の春先に断念した。これは、本年6月に稼動を予定していたが、開発投資に負担が掛かり過ぎると言う理由から機器の完成を間近にして、プロジェクトからの撤退を発表したのである。このプロジェクトは、3.5MWと言う初の大型ウインドフォーマーとHVDC Light(High-voltage direct current)を使用し、これが稼動するとこれまでの既存の風力発電に比べて、20%もエネルギーの生産効率が上がる画期的なもの。しかし、ABB社は、この技術が商業化するためには、約5MW規模の風力発電プラントを現在よりもかなり沖合いの海上に設置しなければ、この技術が生きてこないと言う。現状ではこのような建設計画は無く、生産設備も現状の設備とは全く違うものを新たに作らなければならず、現在需要の無いものの生産設備に投資する事は、株主からの同意が得られないとしており、これ以上の開発投資は出来ないとABB社その理由述べている。

現在、スウェーデンに於いては、3070基の風力発電が計画中となっており、このための環境影響調査が実施されている。また、新たに8000基の海上風力発電プロジェクトが、考えられている。

スウェーデン政府は2001年11月、エタノール、メタノール燃料プロジェクトについて、来年も本年と同様の課税控除を2002年末まで延長すると言う政府決定を発表した。これにより、この秋の予算案で2003年からエタノール、メタノール燃料の課税控除延長が決められ、現在の課税控除が2001年末で切れる事から、1年間エタノール、メタノール燃料が課税控除対象から外されると言う政策上のミスを指摘されていたが、今回の決定はそれを補修した形となった。

スウェーデン政府は、これまで環境に優しいエタノール・バスの採用を各市に奨励し、エタノールの課税控除を目玉に推し進めていただけに、環境に優しい車両としてエタノール・バスを積極的に採用していた各市は、これにより運行廃止の危機が回避された。

例えば、イエブレ市(Gävle)では、市営バスの30%をエタノール・バス使用にしてるが、これに関わる余分な費用は年間250万クローナとなっており、課税控除廃止された場合、更に費用負担が加算される事になる。市の試算では、デイーゼル燃料に比較してエタノールは1リットル当たり最低でも5クローナ高くなるとしている事から、エタノール・バスの使用は運賃の値上がりにつながり、運行を諦めざるを得なかった。

ストックホルム市も市内循環のバスは32台全てエタノール・バスに切り替えており、更に購入台数を増やす予定であった為、イエブレ市よりも更に深刻な問題を抱えていた。

一方、デイーゼル・バスは、近年環境に優しいエンジンの開発が進み、エタノール・バスと同等にはならないものの、市内の環境に以前よりも影響を与えないことから、採用に大きな問題が無い。エタノール・バスの購入費はディーゼル・バスに比較すると96年現在で、3万クローナも高く、運行費用は年間当たり45000km走行で10万クローナも高い。従って、この課税控除が延長されなかった場合、ディーゼル・バスへの切り替えは避けられない状況にあった。

環境に優しい業務用乗用車の税金控除

社民党、環境党、左翼党の与党3党は、環境に優しい業務用乗用車に対して税金控除の法案を議会にはかり可決した。これは、電気、ハイブリッド、エタノール、ガス使用の乗用車の新車購入時を対象としたもので、電気及びハイブリッド車については、通常の乗用車の60%の税率、但し控除金額が16000クローナを超えない、エタノール及びガス車については、通常の乗用車の80%の税率、但し控除金額が8000クローナを超えないものとしている。金額に上限を設けたのは、高級車による多額の控除金額を避けるためであり、2つのカテゴリーに分けた理由は、電気、ハイブリッド車はエタノール、ガス車に比べて価格が格段に高く、環境面でも優れている点から、控除率が高かい。この様に一方では、新しい税政優遇措置を採りながら、他方では課税控除の延長をミスると言う何ともチグハグな税政策となっていた。

アルコール燃料の原材料は、農業と森林産業の余剰資源

政府の決定では、パイロットプロジェクトとなっている2002年のエタノール、メタノール燃料の生産は、オンショルドヴィーク市(Örnsköldvik)の Svenska Etanolkemi が25000立方メートルのエタノールを、スコーネ地方のSvenska Ecobränsleが12000立方メートルのメタノールを、生産出来る事に事になっており、ノールショッピング市(Norrköping)のAgroetanolが5万トン/年のエタノールを2003年まで生産出来る事になっている。しかし、このプロジェクトについては、最低でも2~3年の延長が考えられている。スウェーデンに於けるアルコール燃料の原材料の多くは、農業と森林産業の余剰資源から調達されている。

因みにエタノール燃料を使った車両が一番多いのはブラジルで、今日450万台の自動車がブラジルで走行している。また、一般のガソリン車もエタノールを22%混合しており、極めてエタノール燃料の普及度が高い。ブラジルのアルコール燃料の原材料は砂糖キビである。

エネ庁、エタノール燃料研究プロジェクトを推進

エネルギー庁では、車両用のエタノール燃料研究プロジェクトを推進しているが、本年、「森林資源からのエタノール生産物」のエタノール研究プログラムから5つのエタノール燃料研究プロジェクトに約327万クローナの助成を決定、これは1998年から2004年までの間に設けられた助成プログラムで、7年間総額3000万クローナの予算が政府から計上されている。今回研究助成を認められた研究機関は、ルンド工科大学、ルンド大学、ピテオ・エネルギーテクニック・セントルム、オンショルドヴィーク中央工科大学、ルレオ技術総合大学の5機関、2002年から2004年までの研究助成については、本年9月に申し込みを締め切った。

スウェーデンに於ける太陽エネルギーの活用

暗く長い冬、北はツンドラの地と言われるこの極寒の国で、太陽のエネルギー利用は、かなり厳しいものと言わざるを得ない。しかし、環境を汚さない自然がもたらす優しいエネルギー源を使わない手は無い。スウェーデンの年間の日照時間は平均1000時間強となっており、南北に伸びたこの国では地域的にも日照時間の差がある。従って、太陽エネルギーの有効利用は、スウェーデンの中央部から南にかけての地域が、適地とされており、この中でもゴットランド島は、他の地域の比べて晴天率も良く日照時間が長い。ゴットランド島は現在、最も風力発電の開発が進んでいる地域であり、自然エネルギーの宝庫と言っても過言ではないだろう。

太陽電池、スウェーデンが世界最先端のモジュラー開発へ

スウェーデンに於いて太陽電池によって賄える発電量は、将来的には5TWh/年と試算されており、これは原発1基分に値する。しかしながら、世界の太陽電池の開発状況から見ると2000年末現在で、日本が圧倒的に強く108900kWと1位の座を長年確保しており、ドイツが2位で44300kWと半分以下の規模、3位にアメリカは、21500kWとなっている。スウェーデンは、221kWと16位に位置し、商業規模の設備の導入は非常に遅れを取っている。

しかしながら、研究分野ではウプサラにあるオングストローム研究所のソーラーセンターで、従来のシリコンを使った結晶系の太陽電池に比べて大幅に生産コストを下げられる次世代の太陽電池、薄膜系のCIGS(Cu,In,Ga,Se2)セルの性能アップに成功、研究室段階から工業規模の生産に伴なう問題の解決を図るため、プロットタイプの生産設備を建設。従来のシリコンを使った結晶系のモジュールは、非常に生産コストが高く、現在、0.9Euro/Wと言われているが、薄膜系のCIGSのモジュールは、0.5Euro/W(従来の薄膜系のモジュールは、0.7Euro/W)となっている。研究室段階でのCIGSモジュールの太陽エネルギー変換効率は、16.6%であるが、工業的に量産化した場合のCIGSモジュールの太陽エネルギー変換効率は、14%になるだろうと言う。太陽電池の経済性は、他の電力源に比べ非常に悪く、他のもの対抗していくには、現在より最低でも80%安くモジュールが生産される必要がある。オングストローム研究所では更に研究開発のため、新たに8000万クローナの研究開発資金の助成を太陽電池関係の研究にMISTRA(The Foundation for Strategic Environmental Research)とエネルギー・ミンディグヘーテンEnergimyndigheten(Sweden National Energy Administration)から得ており、これまで総額2億クローナの研究開発資金の助成を得ている。スウェーデンの薄膜系の太陽電池の研究は、20年前のKTH(王立工科大学)から始まり、その後オングストローム研究所のソーラーセンターに研究の中心が移行した。また、オングストローム研究所では、未来の太陽電池として期待されているドイツで開発されたGratzelcell(Dye Sensitized Solar Cells=DYSC)の研究開発も行なっているが、現状ではエネルギー変換効率が約6%と低く、実用化には未だかなりの時間を要する。この開発にあたってオングストローム研究所の研究の特色としては、ガラスを使い何段階にも分かれた生産プロセスを持ったオリジナルの製法とは一線を画し、プラスチックを使って、製紙生産の工程と同じような、より生産プロセスの簡素化を図ろうとしている。これは世界的に注目される研究となっているが、このモジュールは450度と言う熱処理が必要なため、熱に弱いプラスチックを変形させないように製品化するには、かなりの研究開発努力が必要となっている。

現在、スウェーデンに於いて、商業的に稼動している太陽電池の生産設備は、シリコンの結晶系のモジュールを生産している小規模な会社が3社、北スウェーデンのノールボッテン地方にあるだけで、世界の最先端技術を行く薄膜系のCIGSのモジュールの商業稼動が、今後世界市場への進出の鍵となるだけに、その工場の早期建設が望まれている。

ソーラシステムと太陽集熱器

太陽の放射熱を利用するソーラシステムや太陽集熱器は、如何に効率良く熱を取り出すかと言う問題だけに集中すれば良い事から、スウェーデンに於いても1980年代から盛んに開発が行なわれている。一見、スウェーデンに於いて太陽熱が有効利用できるのかと思いがちだが、実はスウェーデンの夏の太陽は、地中海地方と変わらないぐらいの放射熱があると言う。

個人住宅における太陽集熱器の規模は、5~7㎡のものが設置されており、これにより年間に必要な30%のエネルギーが太陽から得られる。7.5㎡のもので、約3000kWh/年の熱が得られる。但し、スウェーデンに於いては利用出来る期間が、太陽光の強い5月から9月の5ヶ月間に限られる。現在、総面積で約13万平方メートルに及ぶ設備が、各種建物に設置されている。政府では太陽集熱器の設置を奨励しており、2000年6月より助成が実施されている。個人住宅の場合は、7500クローナ、集合住宅の場合は、1軒に付き5000クローナ、アパート等の建物には、1建物に付き25000クローナを最高限度額として助成を行なっている。

また、建設研究分野においては、非常に大規模なソーラシステムの開発研究が、1980年代から始められており、低コストのソーラシステム開発に成功すれば大量のエネルギー生産を抑えられると考えられている。これはソーラシステム・フィールドと呼ばれ、通常は地域暖房システムに接続されている。ソーラシステムの能力は、その技術開発とコストの低減にかかっており、1993年には、50GWhのエネルギーが得られてたが、現在の能力開発目標は、600GWhを目指しており、将来的には、1000GWhから4000GWhのエネルギーが得られると考えられている。エネルギー・ミンディグヘーテンEnergimyndighetenとVattenfall社は、この研究開発プロジェクトに800万クローナを助成しており、特に次の3つの研究開発に重点を置いている。1.反射板の使用による太陽集熱器への熱の取り込みの増加。2.表面ガラスの非反射処理。3.真空ガラス管形太陽集熱器。

スウェーデンに於ける燃料電池の研究開発

スウェーデンに於ける燃料電池の開発の歴史は、1960年代に重電メーカーであるアセア(ASEA)社が、200KW規模のAFC‐Prototypの燃料電池(Alkalic Fuel Cell)を潜水艦の搭載用として、研究開発に取り組んだのが始まりであるが、稼動するまでには至らなかった。この研究の一部は、ストックホルムにある王立工科大学(KTH)に引継がれたが、特にスウェーデン産業の注目を集める研究にはならなかった。1980年代に入ると電力業界が、エネルギー生産の新しい形態として燃料電池に関心を示し、ヴァテンファル(Vattenfall)社とシードクラフト(Sydkraft)社が当時この燃料電池の先進技術を有していた米国と日本のプラントを購入して、実証用に3基の天然ガスを使用した燐酸燃料電池PAFC (Phosphoric Acid Fuel Cell)プラントを1990年代初頭に稼動した。これは、Fuji 50kWe2基、ONSI 200kWe1基で1991~1995年の間に運転が行なわれ、熱利用と電力供給に使われた。約5000~20000運転時間により、各プラントの問題点と経済効率について多くのデータを収集出来たが、結論として経済的な競争力がないとして、稼動を終了している。ヴァテンファルVattenfall社は、1997年にONSI PC25C 200kWeを実証試験用に新たに購入して稼動しており、補修改善次第では出力アップと倍以上の耐用時間が見込め、現在スウェーデンに於いて唯一稼動している商業プラントであるが、近々運転終了を予定している。

1998~2001年、エネルギー・ミンディグヘーテンEnergimyndigheten(Sweden National Energy Administration)は、工科大学の燃料電池に関する6つの博士号研究プログラム(王立工科大学(KTH)とルンド工科大学(LTH))であるPEFC(Polymer Electrolyte Fuell Cell)、SOFC(Solid Oxide Fuell Cell)、MCFC(Molten Carbonate Fuell Cell)の研究について合計500万クローナの助成とこれと並行して1999~2002年まで王立工科大学(KTH)が行なっている応用研究PEFC実験施設(国際エネルギー機関IEAとの共同プロジェクト)への790万クローナの助成をおこなった

各工科大学の研究プログラム「道路車両のエネルギーシステム」では、2000~2003年の4年間にエネルギー・ミンディグヘーテンEnergimyndighetenが1億500万クローナの研究助成を行い、その内900万クローナが燃料電池の研究に当てられている。

他方、産業が中心になって行なっている幾つかのプログラムがあるが、MISTRA(The Foundation for Strategic Environmental Research)プログラム「より良い環境のためのバッテリーと燃料電池」では、PEFC周辺の基礎研究として、LPB(Litium-Polymer Batterier) 、NiMH(Nickel-MetallHydrid Batterier)の研究分析を行なっている。これはボルボ(Volvo)社、ABB社その他の会社が出資して、王立工科大学(KTH)がプログラムの調整役として関わり、最初のプログラムは1998~2001年まで実施された。それに費やされた資金の総額は1億クローナに上る。

また、政府と自動車産業の共同研究開発プログラム(通称 グリーン・カー プログラム)では、ボルボ(Volvo)社の乗用車及びトラックの両部門とサーブ(SAAB)社の乗用車及びトラックの両部門が18億クローナの研究開発投資を行なっており、政府はこの内5億クローナの助成を行っている。(燃料電池に関する具体的な研究開発費は不明。) このプログラムを統括しているのは、VINNOVA(Swedish Agency for Innovation Systems)であるが、この研究開発の目的は車両のより良い環境特性とこれを通じてスウェーデン自動車産業の競争力を高める事にある。

2002-2005の燃料電池研究開発プログラム

2002~2005年の4年間も引続き、工科大学の研究プログラムとして、PEFC(Polymer Electrolyte Fuell Cell)、SOFC(Solid Oxide Fuell Cell)、MCFC(Molten Carbonate Fuell Cell)の研究開発は進めるものの、MCFCについては250kWe以上の規模のプラントが適正と言われ、他のものに比べて大小のものが出来るという融通がきかない為、研究を縮小する。このプログラムには、エネルギー・ミンディグヘーテンEnergimyndighetenより100%の助成が見込まれており、毎年600万クローナ、計2400万クローナの助成が行なわれる。これに応用研究等の部分は1200万クローナが出資され、その内の60%は企業が負担し、エネルギー・ミンディグヘーテンEnergimyndighetenは40%を負担する。

また、実証試験のプロジェクトとして、ストックホルムにある現在建設中の新都市ハンマルビー・シュースタードHammarby Sjöstadに2~4基の据え置き型の燃料電池の設置を予定、このプラントからは、電気と熱が供給される。コンペによりSOFC-systemをデザインしたFuel Cell Technologies Corporationが既に2基を受注、2002年8月には設置完了を予定している。これに使用される燃料は、直ぐ近くにある汚水処理場ヘンリクスダールHenriksdalの汚泥から発生させたバイオガスが使用される。このバイオガスの他にも水素ガス、都市ガス、天然ガスそしてエタノールも使用される予定。ハンマルビー・シュースタードHammarby Sjöstadでは、省エネ、環境リサイクルを徹底して行なう新都市計画に従って、新エネルギーの積極利用を考えており、ゴミ処理焼却のエネルギー利用、バイオエネルギー、省エネ型の蛍光灯の使用、ソーラーシステム、風力発電、燃料電池と言ったものをエネルギーシステムの中に取り入れている。しかし、燃料電池の場合、開発途上の技術と言う事もあって、他の新エネ技術に比べてエネルギーコストは高く、1.20クローナ/kWhとなっている。因みに、地域暖房・温水供給プラントは0.25クローナ/kWh、風力発電は0.40クローナ/kWh、太陽電池は4.00クローナ/kWhとなっている。

一方、スウェーデンはEUプロジェクトであるCUTE(Clean Urban Transport for Europe)に参加しており、27台の燃料電池駆動によるバスをストックホルム、アムステルダム、バルセロナ、ハンブルグ、ロンドン、ミラノ、ポルト、ルクセンブルグそしてシュトッツガルトの9都市で運行させる事にしている。ストックホルムでは、このプロジェクトを2003年より開始し、水素ガスを使用した3台のバスを市内で2年間運行させる事になっている。このプロジェクトには、エネルギー・ミンディグヘーテンEnergimyndigheten、VINNOVA(Swedish Agency for Innovation Systems)、シードクラフト(Sydkraft)社、ビルカ・エネルギー(Birka Energi)社、ブスリンク(Busslink)社、市交通局(SL)、エボブス(Evobus)社が関心を示している。

燃料電池に対する関心は、各産業分野に於いて大きな広がりを見せており、電力、自動車、潜水艦、宇宙、防衛、携帯エレクトロニクス分野と燃料電池とそのコンポーネントを作る産業だけのもではなくなって来ている。

スウェーデンにおける地熱エネルギーの利用

北欧に於いて地熱と言うとアイスランドしか思いつかないが、この地熱を利用しようと言う考えは、スウェーデン、デンマークそしてノルウェーのスカンジナビアに於いてもあると言う。

スウェーデンに於いては、ストックホルム、ルンド、マルメの3箇所に於いて地熱プロジェクトが存在する。この無償の熱エネルギー源は、環境に優しいことから利用価値の高いもの考えられている。しかし、このエネルギーを取り出すためには、ポンプを稼動する為の電力が必要であり、充分な適正温度が得られない場合は、温度を高める為にヒートポンプを稼動する電力が必要となる。同じ様に熱源として利用する他のシステムから比較すると、殆どの場合温度が充分ではない。そして安定した稼動を保証する充分な温水の量が必要なため、試験的なボーリングが必要となっている。このボーリングは、ストックホルム、ルンド、マルメの3都市に於いて実施される。また、スコーネ地方の南西地域も有望視されている。既にこの地域は、石油探査の為の試験ボーリングが20箇所に於いて行われており、地殻の周辺に温水がある事が確認されている。

ルンド スコーネ地方のルンドの郊外には、1984年から既にスウェーデンに於いて唯一の地熱プラントが稼動しており、年間300~350GWhの熱を供給しており、プラントの開設以来、5TWh以上のエネルギーを供給してきた。温水は20℃のものを700mの地下から取り出しており、ヒートポンプを使って地域暖房システムのレベルまで、温度を上げて供給している。ルンド・エネルギー社では、当初色々な問題を抱えるのではないかと危惧していたが、今日まで問題も無く順調に稼動し続けている。しかし、ルンド・エネルギー社では、これだけに満足しておらず、更にもう1施設の地熱プラントを計画している。これはルンド市直下の断層の上に建設しようと言うもので、地質構造から2つのプレートがお互いにぶつかり合っている。ボーリングの深さは、3500mと地熱プロジェクトでは、非常に珍しいものとなっている。プレートが交差している部分から125℃の温水が得られると信じられており、ボーリングによって、どのぐらいの水量が存在するかを確認する。もし、充分な水量が得られる場合は、ポンプによって、100kg/秒の温水を汲み上げる事になる。これによって、年間390GWhの地域暖房へのエネルギーが得られる。また、既存の地熱プラントは、閉鎖せずに供給量を半分の160GWh/年に落して稼動を継続する。トータルで、550GWh/年の供給量となり、これはルンド市とロンマ市(Lomma)の暖房供給の半分に以上にあたる。(両市の年間暖房用エネルギーの供給量は、約900GWh。)

ルンド・エネルギー社では、このプロジェクトの最初の坑を掘る為の費用を約8000万クローナと見積もっており、その内、3610万クローナをエネルギー庁からの助成で賄う。プラントの総工費は、2億3000万クローナと見ている。最初のボーリングで、予想通りの結果が得られた場合、2本目の坑を2003年の3月に予定、地熱プラントの完成予定は、2004年の秋を見込んでいる。

ストックホルム ストックホルム市に於いては、メラーレン湖の地底から地熱が得られる可能性があると見て調査が進められている。この場所は、数百万年前に隕石が衝突して最下層の岩盤を破壊していると考えられており、通常よりも多くの地下水を浸透させていると見られている。2001年の間に深さ900mを超える坑が2本ボーリングされたが、1本の坑からは砂岩が大量に採取され、もう1本の坑からは予想通り破砕された最下層の岩盤が採取された。2本の坑とも予定通りの作業を完了しており、現在その評価と一部の実験が王立工科大学の手で行われている。水温については、ほぼ予想通りの結果が得られており、1kmあたり15℃の温度上昇があるとしている。この秋に評価のについての報告を受けて、プロジェクトの継続についての決定を行う事になるが、継続が決まった場合、第二段階として試験プラントの建設と2kmの坑が掘られる事になる。商業的に稼動させるには、最低でも40℃以上の温度が地域暖房システムに必要と言われており、予定されている坑の深さはその条件を満たすものと考えられている。また、温水を循環させるに必要な水量が得られる事も重要な部分であり、この試験プラントで実証させる事が必要とされている。

同じ様なプロジェクトは、コペンハーゲンでも最近試験ボーリングが行われており、オスローも同じ様な計画が発案されている。しかし、火山の熱を利用したアイスランドの様に、高温の地熱エネルギーを使って発電まですると言うのは、現在のところスカンジナビアに於いては不可能に近く、ルンドの次期地熱プラント125℃が今のところ得られる最高温度である。発電用のプラントには最低でも150度の温水が必要となり、それを得る為には、5000m以上の深さの坑を掘らないとその温度は見込めない。

産業からの余熱の有効利用

地域暖房システム協会(Fjärrvärmeföreningen)が作成したレポートに因ると、各産業の生産プロセスから無駄に排熱されている余熱について、大量の未利用エネルギーが未だ残されているとしており、理論的には現在の4.8TWhから倍の9.5TWhに利用を拡大出来ると見られている。

このレポートを行った趣旨は、各産業の余剰エネルギーの有効利用に関心を持つエネルギー企業と産業が、将来的にどの程度までその利用が望めるのかを質したもの。これによって余熱利用についてエネルギー企業と産業による共同プロジェクトを立ち上げようとしている。

1990年に於いて、余熱利用の規模は3TWhであったが、2000年には4.8TWhと言う伸びを示している。しかし、前述の如く現状に於いても9.5TWhの利用可能能力を潜在的に有しており、特に、年間20TWh強の大量なエネルギー消費をする製鉄、製鋼産業部門に於いては、現状より4倍近くの余熱利用が可能と見られている。

1999年の余熱利用の供給状況を見てみると製鉄、製鋼産業は、1116GWhとなっているが、その供給能力は、4294GWhまで高められると見ている。次に、注目されるのは、大量熱消費とは無関係な食品産業にも、倍の能力を高められると見られており、114GWhから234GWhと言う数字が示されている。パルプ、製紙産業は1433GWhから1800GWhに能力が高められると見られている。製油産業は、1154GWhから1500GWhに能力が高められると見られている。化学産業は、676GWhから978GWhに能力が高められると見られている。そんな中でゴム、プラスチック産業は、余熱利用の一番遅れている産業であり、2GWhから91GWhに能力が高められると見られている。その他の生産業種でも108GWhから490GWhに能力が高められると見られている。次の業種は既に100%の余熱利用が図られており、その利用規模は、鉱業が54GWh、木材産業が36GWhとなっている。

既に、成果を上げている余熱有効利用の共同プロジェクトを見てみるとシェル石油とヨーテボリ・エネルギーの共同プロジェクトでは、地域暖房システムの三分の一に当たる熱をシェル石油の余熱から供給している。また、ホーフォッシュ(Hofors)市では、地域暖房システムの25%に当たる熱を製鉄会社Ovako Steel社の余熱から供給を受けている。ヴァールベリー(Varberg)市では、地域暖房システムの多くの部分をヴェール-(Värö)にある工場から余熱の供給を受けており、これに因って暖房料金の20%の引き下げを実現した。また、ヨーテボリ市とソーデルテリエ(Södertälje)市では、地域暖房システムの一部にビール工場から余熱の供給を受ける事になっており、ティムロ(Timrå)では、地域暖房システム網にオストランド(Östrand)にあるパルプ工場の余熱を組み込み、その熱の殆どの部分の供給を受ける。

ユニークなアイデアとしては、先に述べたホーフォッシュ(Hofors)市は地域暖房システムに製鉄会社Ovako Steel社の余熱の供給を受けている訳だが、これまでよりも一番熱効率の高い余熱の利用方法として、太陽熱温水器を溶鉱炉の上に設置して溶鉱炉の余熱を直接温水に変えようと言うもの。これは、ホーフォッシュ・エネルギー社が考え出したもので、これまで色々試したものの中では、一番効果が高い事が実証されたため実用化に踏み切る事となった。溶鉱炉の上1mの所では、温度が350度にも達し、暖房用の温水を得るには充分過ぎるほどの熱を持っている。この装置の設置によりOvako Steel社からホーフォッシュ市の地域暖房システムへの熱供給は、現在の年間20000KWhから30000KWhへ増加すると試算している。ホーフォッシュ市では、トーシュオーケル(Torsåker)と言う野外の場所に太陽熱温水器を設置しているが、実にここの100倍もの熱が得られると言う。これは、太陽光の強い季節しか稼動できない野外と違って、溶鉱炉では1年中安定した熱が得られる事に起因している。この装置を全てのスウェーデンの製鉄産業に導入した場合、年間100GWhの熱を得られると試算している。

たたむ

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